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東京地方裁判所 昭和28年(行)89号 判決

東京都荒川区三河島町二丁目一〇七七番地

原告

松崎豊次

同都同区三河島町五丁目九〇二番地

原告

長坂素馬

同都江戸川区小岩町五丁目八四〇番地

原告

渡辺精次郎

右三名訴訟代理人弁護士

大塚一男

右三名訴訟復代理人弁護士

関原勇

東京都千代田区大手町一丁目七番地

被告

東京国税局長

脇坂実

同都荒川区日暮里七丁目四八三番地

被告

荒川税務署長

三枝正作

同都江戸川区逆井一丁目九二番地

被告

江戸川税務署長

橋本静治

右三被告指定代理人法務省訟務局第五課長

武藤英一

同大蔵事務官

国吉良雄

渡辺勇

右当事者間の昭和二十八年(行)第八九号課税処分取消事件について、次のとおり判決する。

主文

原告三名の訴を却下する。

訴訟費用は原告等の負担とする。

事実

原告等訴訟代理人は、「(一)被告荒川税務署長が昭和二十七年八月七日原告松崎に対してした昭和二十六年度分総所得金額を十五万八千五百円と訂正した決定のうち九万六千七百十六円を超過する部分を取消す。(二)被告荒川税務署長が昭和二十七年八月七日原告長坂に対してした昭和二十六年度分総所得金額を十五万三千九百円と訂正した決定のうち八万六千九百六十円を超過する部分を取消す。(三)被告江戸川税務署長が昭和二十七年七月二十五日原告渡辺に対してした昭和二十六年度分総所得金額を二十六万九千円と訂正した決定のうち二十万一千円を超過する部分は取消す。(四)訴訟費用は被告等の負担とする。」との判決を求め、請求の原因として次のとおり述べた。

昭和二十六年度分所得税に関する確定申告として、原告松崎は荒川税務署長に対し所得金額を九万六千七百十六円と、原告長坂は同税務署長に対し所得金額を八万六千九百六十円と、原告渡辺は江戸川税務署長に対し所得金額を二十万一千円と申告したところ、被告荒川税務署長は昭和二十七年五月中旬原告松崎申告の右所得金額を二十三万円に原告長坂申告の右所得金額を二十万八千円に、被告江戸川税務署長は昭和二十七年五月十八日原告渡辺申告の右所得金額を三十万円にそれぞれ更正する旨の決定を行いそれぞれ原告三名に通知した。原告三名は右各税務署長に再調査の請求をしたところ、被告荒川税務署長は昭和二十七年八月七日原告松崎に対する前記更正所得金額を十五万八千五百円に、原告長坂に対する前記更正所得金額を十五万三千九百円に、被告江戸川税務署長は昭和二十七年七月二十五日原告渡辺に対する前記更正所得金額を二十六万九千円にそれぞれ変更する旨の決定を行い、それぞれ原告等に通知した。原告三名はこれに対し被告東京国税局長に審査の請求をしたところ、被告東京国税局長は昭和二十八年八月七日原告三名に対し審査請求棄却の決定をし、原告三名は同月九日その通知を受けた。しかし、右再調査決定に係る各所得金額中原告等の申告を超える部分は不当であるから、右不当の超過金額の部分の取消を求める。

かように述べ、立証として原告松崎、長坂、渡辺各本人の供述を援用し、乙号各証が真正にできたことを認めた。

被告等訴訟代理人は、主文同旨の判決を求め、その理由として、「本訴は、被告荒川税務署長及び被告江戸川税務署長が更正した昭和二十六年度所得金額の取消を求める訴である。更正に係る所得金額の取消を求める訴は、審査の決定に係る通知を受けた日から三カ月以内に提起しなければならない。原告松崎及び渡辺は昭和二十八年八月八日、原告長坂は同年七月二十四日それぞれ審査請求棄却の通知を受けたに拘らず、それから三カ月を経過した同年十一月九日に至つて漸く本訴を提起した。即ち、本訴は出訴期間を徒過したもので不適法である。」と述べた。

次に本案について、「原告等の請求を棄却する。訴訟費用は原告等の負担とする。」との判決を求めて「原告等主張の事実は、原告松崎及び原告渡辺の申告所得金額、原告渡辺に対する更正決定年月日、再調査決定年月日、原告長坂に対する審査決定年月日原告三名が審査決定の通知を受けた年月日の点、原告等主張の再調査決定の所得金額が不当であるという点を除いて、認める。原告松崎の申告所得金額は十一万五千七百三十八円、原告渡辺の申告所得金額は二十万一千七十一円、原告渡辺に対する更正決定の日は昭和二十七年五月十五日、再調査決定の日は同年七月十五日、原告長坂に対する審査決定の日は昭和二十八年七月二十二日、原告松崎、渡辺が審査決定の通知書を受けた日は昭和二十八年八月八日、原告長坂が審査決定の通知書を受けた日は同年七月二十四日である。なお再調査決定の所得金額は正当である。と述べた。

そして、立証として、松乙第一号証、松渡乙第二号証、松乙第三号証、渡乙第一及び第三号証、長乙第一ないし第三号証を提出した。

理由

昭和二十六年度の所得金額に関する東京国税局長の審査決定に係る通知を原告等が受けた日について争いがあるが、松乙第一号証、松渡乙第二号証、松乙第三号証、渡乙第一及び第三号証、長乙第一ないし第三号証(いずれも真正にできたこと争いなし)と原告三名本人の各供述とを合せ考えると、原告松崎及び渡辺は昭和二十八年八月八日、原告長坂は同年七月二十四日右審査決定の通知書を受けたことを認めることができる。

原告三名本人の各供述中右審査決定の通知を受けた日に関する部分は信用することができない。ほかに前認定を覆し、原告等主張の事実を認めることができる証拠はない。

原告三名が本訴を提起した日が昭和二十八年十一月九日であることは、記録上明らかである。

ところで、税務署長の更正に係る所得金額の取消を求める訴は、審査の決定に係る通知を受けた日から三カ月以内に提起しなければならないこと、所得税法五一条によつて明らかである。

原告等が被告荒川税務署長及び被告江戸川税務署長の更正に係る昭和二十六年度所得金額(再調査決定による)の取消を求める本訴を提起した日が、審査決定に係る通知を受けた日から三カ月を経過したのちであることは前記のとおりであるから、本訴は出訴期間を徒過した点において不適法である。といわなければならない。

よつて原告等の訴はこれを却下すべく、訴訟費用の負担について行政事件訴訟特例法一条民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 新村義広 裁判官 入山実 裁判官 石沢健)

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